宴の終焉
モーニング娘。分割の報を受け、
発作的にアップしたある詩のアレンジ版。


ふりむくと
一人の母親が立っている
彼女はモーニング娘。がナゴヤ球場で「愛の種」を完売した日に
一人の子供を産み落とした

ふりむくと
一人のサラリーマンが立っている
彼はモーニング娘。がシングルを出すたびに
景気づけにとCDを3枚も買った

ふりむくと
一人の喫茶店の主人が立っている
彼は中澤裕子の誕生日に
二十年勤めていた会社を辞めた

ふりむくと
一人のホステスが立っている
彼女は「Memory青春の光」の発売日に
男に捨てられた

ふりむくと
一人の小学生が立っている
彼女は学芸会で「ちょこっとLOVE」を歌い
一躍学校の人気者になった

ふりむくと
一人の車椅子の少女がいる
彼女は入院中 
起きがけに 「LOVEマシーン」を聴くのが日課であった

ふりむくと
一人の女子高生が立っている
彼女は初めてアルバイトをしてもらった給料で
母親に「ふるさと」を買ってあげた

ふりむくと
一人の頑固親父が立っている
彼は娘が結婚式で歌う「ハッピーサマーウエディング」を聴き
人目もはばからず号泣した

ふりむくと
大都会の風の中に
まだ一度も新聞に名前の出たことのない
何万人ものファンが立っている
人生のステージに
自分の出番を待っている
彼らの一番後ろから せめて手を振り 声を出し
別れの挨拶を送ってやろう
娘。たちよ
君たちのいなくなったステージには
希望だけが取り残されて
風に吹かれ たなびいている

ふりむくと
一人の青年が立っている
彼は恋人の誕生日に日本武道館へ駆けつけたことが
彼女と別れる原因になった

ふりむくと
一人の非行少年が立っている
彼は少年院の檻の中で
「I WISH」を聴いて更生を誓った

ふりむくと
一人の大学生が立っている
彼は福田明日香が脱退を発表した日
初めてウイスキーをストレートで飲み記憶をなくした

ふりむくと
一人の引きこもり少女が立っている
彼女はテレビのモーニング娘。を見て
笑うことの大切さを知った

ふりむくと
一人の野球少年が立っている
彼は帽子の裏に市井紗耶香の写真を貼り付けて
毎日投げ込みに励んでいる

ふりむくと
一人の受験生が立っている
彼はモーニング娘。を見て
挫折のない人生はないということを教えられた

ふりむくと
一人のコンサートスタッフが立っている
彼はステージの機材を片付けながら
彼女たちと過ごした日々のことを思い返している

ふりむくと
一人のモーニング娘。ファンが立っている
彼の机の引き出しには
出せずじまいで黄ばみかけたファンレターが今も入っている

もう誰もふりむく者はいないだろう
うしろには照明の落ちたコンサート会場があるだけで
そこにはモーニング娘。は
もういないのだから

ふりむくな
ふりむくな
うしろには夢がない
モーニング娘。がなくなるからって
彼女たちがいなくなるわけじゃない

思い切ることにしよう
モーニング娘。は ただ十数枚のCDに過ぎなかった
モーニング娘。は ただ一曲の思い出に過ぎなかった
モーニング娘。は ただ数年間の連続ドラマに過ぎなかった
モーニング娘。は 空しかったあの日々の代償に過ぎなかったのだと

だが忘れようとしても
目を閉じると 彼女たちの笑顔が浮かんでくる
耳をふさぐと コンサートの熱狂と喝采が蘇ってくるのだ

ふと気づく

目の前に
二十一人の女が立っている
そしてただ深々と その小さな頭を垂れている

こちらも深く 礼をして
また
再び
歩き出した

さらば モーニング娘。


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